眼科について
動物の目の病気には、白内障や緑内障のように人間と同じ種類のものもあれば、犬特有・犬種特有のものあります。例えば、ブルドッグやペキニーズなどの短頭種の眼科疾患では、露出による角膜傷害が大半を占めます。
犬種特有の眼科疾患を持つワンちゃんを飼われている場合、予防が何より大切になりますので、一度ご相談ください。
動物は人間ほど視覚が発達していないと考えられていますが、短期間で失明するような重篤な病気では、震えがくると同時に動かなくなることがあります。早期発見・早期治療で視覚を取り戻せる可能性がありますので、定期的に眼科検診を受けましょう。
眼科では第一次診療のほか、他院からの紹介による二次診療にも対応しております。はっきりとした診断がくだせない病気や、専門的な設備を必要とする治療を受けたい場合など、かかりつけ医様からご紹介いただいたペットを治療する、二次診療サービスをご提供しています。
二次診療をご希望の場合は、かかりつけ医様または飼い主様よりお電話にてお問い合わせください。
当院で行う眼科診療の特長
眼科の専門家が診療
豊富な経験と確かな技術で、様々な眼科疾患を治療
当院の院長は眼科が得意分野です。これまで眼科を専門に様々な治療に取り組んでまいりました。豊富な知識と優れた技術で、高度な内科・外科治療を行っております。診察では、眼科専門器具を用いた検査、ならびに、飼主様へは丁寧なご説明をいたします。
眼科疾患を放置すると、数日で失明の危機を招く恐れもありますので、ペットの目に異変を感じた場合はお早めにご相談ください。
エキゾチックアニマルの眼にも対応
犬や猫以外の眼科診療も行います
犬や猫の眼科疾患だけでなく、ウサギやフェレット・ハムスターなどのエキゾチックアニマルについても対応いたします。
エキゾチックアニマルの病気については、まだ解明されていない部分が多く、充実した眼科診療が受けられる病院は限定されます。
“他院で診察を受けたものの、治療の効果があがらなかった”などのお悩みをお持ちの飼い主様は、ぜひ一度当院までご相談ください。
※当院スタッフで保定ができる動物に限らせていただきます※
当院で行える眼科検査・設備
- 各種反応・反射試験
- 眼圧測定
- マイボーム腺検査
- 涙液量検査
- 角膜染色
- ジョーンズ試験
- 細胞診
- 涙液槽破壊時間測定(BUT)
- 細隙灯検査
- 眼底検査
特殊眼科検査
- 眼科超音波検査
- 網膜電位図検査
- 隅角検査
眼科治療・手術用機器
- 白内障用超音波乳化吸引装置(ホワイトスター・シグネチャー)
- 眼科手術用顕微鏡(ハーグストレイトサージカル社製 Hi-R NEO 900)
- 緑内障用内視鏡下眼内レーザー装置(ECP)
- 経瞳孔網膜凝固レーザー装置
代表的な目の病気について
白内障
白内障は、目の水晶体が白くにごり、進行して全体が真っ白になると視覚を失ってしまいます。また、二次的に水晶体誘発性ぶどう膜炎(眼内の炎症)や続発緑内障を引き起こすこともあります。
しかし、適切な検査を行い外科手術が適応であれば、手術を行うことで視力が回復し、以前より元気で活発に過ごせるようになります。
手術にはメリットもあればデメリットもあります。それが手術による合併症です。動物の目は人の数倍免疫システムが働いており、眼内を触ることで術後にとても強い炎症が起こります。これが制御できなければ、結局緑内障や網膜剥離を引き起こし失明してしまいます。
白内障は術後の管理がとても重要です。
白内障の症状
飼い主様が、光の当たり具合でワンちゃんの目が白っぽくなっていることに気が付くことが多いです。初期の状態であれば、日常生活に支障はありません。しかし、白内障が進行するにつれて、壁や電柱などにぶつかる・ちょっとした段差につまずく・暗いところを嫌がるなど、行動にも異変が見られるようになります。
白内障の進行程度には個体差があり、短期間で失明に至ることもあれば、年単位で徐々に進行していくこともあります。
白内障の原因
病因としては「先天性白内障」と「後天性白内障」に分類されます。
後天性白内障では、病期や発症原因によって、若年性・老齢性・遺伝性・代謝性・外傷性など様々です。
犬の場合、遺伝性若年性白内障が多く、特に2歳ごろまでに発症する白内障では急速に進行するため、早期の手術が必要となることが多いです。 白内障の遺伝的素因を持つ犬種は200犬種以上あり、日本で代表的なものとして、トイプードル・柴犬・ミニチュアシュナウザー・アメリカンコッカースパニエル・ボストンテリアなどが挙げられます。
白内障の治療
内科的治療
白内障の初期であれば、症状の進行を遅らせるために、点眼薬を用いた内科的治療で対処できる可能性があります。しかし、水晶体の白濁が進行し視力障害が起こっている場合、点眼薬だけでは視力の回復は見込めません。
外科的治療
原則として白内障の治療は手術になります。人間の白内障手術は日帰りでの治療が可能ですが、ペットの場合は全身麻酔による手術となり、合併症を起こす可能性も考慮すると、3~7日間の入院が必要です。特に術前術後は集中的なケアを行います。
白内障手術
緑内障
目の中には眼房水と呼ばれる水が存在しており、この水の圧力によって目の硬さや大きさは保たれています。ところが、緑内障ではこの眼房水の出口になる隅角が何らかの原因によって詰まると、眼房水が排泄されにくくなるため、眼圧が上昇します。眼圧が上昇した状態が長期間続くことで、次第に視神経が圧迫され、視覚障害を起こして、やがては失明してしまいます。また、かなりの痛みを伴うため、緊急の処置を要する場合があります。
緑内障の症状
眼圧が上昇すると激しい痛みを感じます。緑内障の初期症状は軽く、目が少し充血する結膜炎のような状態になります。症状が進み高眼圧になると「活動量が減る」「イライラしやすい」「食欲が落ちる」などの症状が現れ、飼い主様がある日「何だか目が大きくなったな」と気付く段階では失明からは逃れられません。内科治療で維持が困難な場合は、「眼球摘出」や「シリコン義眼挿入術」などの治療方法しかなくなってしまいます。
緑内障の原因
緑内障は構造上の問題から発症する「原発緑内障」と、他の疾患から二次的に合併症として発症する「続発緑内障」に分けられます。原発緑内障は、眼の中の水(房水)の出口である隅角の構造異常により目詰まりが起こり房水が排出しづらくなることで発症します。
構造異常の形態により閉塞隅角緑内障、開放隅角緑内障に分かれますが、いずれも遺伝的素因があるとされております(好発犬種:柴、Aコッカースパニエル、ビーグル、バセットハウンドなど)。
続発緑内障は、眼内の炎症や出血、物理的な変化により隅角が目詰まりを起こして発症します。代表的な疾患として白内障、ぶどう膜炎、網膜剥離、眼内腫瘍があります。
緑内障の治療
まずは、早めに眼圧を下げることが重要です。高眼圧が1~3日続くと視神経は取り返しのつかないダメージを受けてしまうため、迅速な処置が必要となります。高眼圧の状態が24時間以上続くと約半数程度が、72時間経過するとほぼ100%が視力を失うと言われているのです。
また、視覚の有無によって緑内障の治療方法は変わり、視覚の温存を目的とするのか、視力を失った目に対して痛みの緩和や合併症予防を目的とするのかで対応が異なります。
点眼薬
早期に適切な点眼薬を選択することが、大変重要となります。
点滴および内服薬
点眼薬だけでは眼圧降下が不十分な場合は、点滴治療を行います。
半導体レーザー手術
レーザー手術を行うことで、眼房水の産生を抑制し、眼圧を正常に戻します。場合によっては複数回の手術が必要です。
レーザー手術には、眼球内を触らずに外から盲目的に当てる経強膜レーザー(TSCP)と、眼球内から直接毛様体に目視下でレーザーを当てるエンドレーザー(ECP)があります。
また、最近ではより侵襲の少ないマイクロパルスレーザーも出てきており、治療の選択肢は広がってきました。
隅角インプラント手術
眼房水の出口である隅角に管を取り付け、管から眼球外に眼房水を排水する装置を取り付ける手術です。
眼球に小さな穴を開けますが、眼内を大きく触ることはなく、レーザーなどのように毛様体を傷つけることはありません。当院では、主にこの方法で手術を行っております。
しかし、インプラント手術は適応できる場合とできない場合がありますので、ご相談により最適な治療法を選択します。
眼球摘出
点眼や点滴・レーザー手術などで改善しない場合や、緑内障の原因が腫瘍の場合、また点眼が行えない場合の治療です。
シリコン義眼挿入術
点眼や点滴・レーザー手術などで改善しない場合に、眼球温存を目的として行います。
角膜に傷がる場合や涙に異常がある場合、眼球が萎縮して小さくなっていると適応できなくなります。
手術は基本日帰りで、術後は抗生剤の点眼、内服を2週間から1ヶ月実施するだけです。緑内障の治療は手術直後から必要なくなります。
その後合併症(主にドライアイ)がなければ、特に継続的な治療は必要ありません。
硝子体内注射
視覚がなく、点眼・内服・レーザー手術で改善がない場合、痛みからの解放を目的として実施します。
眼球内(硝子体内)に薬剤を注射し、眼球内の構造を破壊する方法です。
鎮静が必要であったり、複数回実施する場合もあります。
処置後に痛みを伴う場合があるため、当院では現在推奨しておりませんが、手術が適応できない高齢の場合などご相談により検討いたします。
涙膜の病気
涙膜は涙(液体)・ムチン(粘液)・マイバム(油)の3構造からなります。このうち1つでも異常を起こすと、涙膜の形成ができず目の乾燥が起こります。
ドライアイに代表される涙膜の病気では治りにくい、または、繰り返し起こる目の充血や黄色の目ヤニが見られることが特徴です。
また、涙やけもサプリメントや拭うだけでは根本的な治療とならず、きちんとした原因治療が必要です。
特にシーズーやキャバリア・パグなどの短頭種は、涙が正常に出ていても、目が突出しているため角膜の表面が乾きやすく傷つきやすい犬種です。このような犬種では定期的な目のチェックが必要となります。
角膜の病気
眼科疾患の中で、最も多く見られるのは角膜の病気です。
散歩に出かけた後やシャンプーの後に、目をしょぼしょぼさせているときや、目やにで目の周辺が汚れているときは、角膜に傷を負っている可能性があります。治りにくい傷では眼科専門医による手術も必要となることがあります。
角膜の傷口から細菌が感染すると、数日以内に角膜に穴が開いてしまう(角膜穿孔)場合があります。当院では、角膜穿孔に至るような重度な角膜の傷でも、出来うる限り内科的な治療を心がけておりますが、視覚の予後を考えて外科手術を選択する場合もあります。
目をショボショボさせていたら、お早めの受診をお勧めします。
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎とは、目の中のぶどう膜と言われる組織が炎症を起こす病気です。
ぶどう膜炎の初期症状としては、目をしょぼしょぼさせる・涙の量が増える・目やにが出るなどが挙げられます。なかなか治らない目の充血も、ぶどう膜炎である危険性もあります。
また、ぶどう膜炎を発症した目では、虹彩の筋肉が炎症で収縮することで、とても強い痛みを起こします。飼い主様からはあまり痛がっている様子はわかりにくいため、重症化してから来院することが多い疾患です。
ぶどう膜炎は緑内障や白内障にもつながりますので、眼科専門機器の揃った病院で適切な治療を受けましょう。
網膜の病気
網膜は目の中にある神経組織で、目から入った情報を脳に伝える大事な役割を果たしています。
網膜の代表的な病気としては「網膜剥離」がよく知られており、最悪の場合は失明に至ります。また、網膜剥離は人の場合、飛蚊症など軽度な症状でも発見されますが、動物は片目を失明しても日常生活は問題なく送れます。そのため、動物で網膜剥離を早期発見するのは大変困難です。
夜の散歩を嫌がるなどの行動が見られたら、早めに受診してください。